公演情報

VOL.10「ナナシのハナシ」:ストーリー

どこでいつ手に入れたかなんてわからない。
「それを読むと、なにかが起こる」
きっと誰かがそういったに違いない。題名のない、ぶ厚くて古びた本。
見るからに、何かが起きそうだもの。
「起こればいい」と思い、僕は読みふける。

必死に会社に通ったフリをする、リストラされた父。
馬鹿みたいに人に優しいのが取り柄。優しすぎるのは、ただ自分を慰めたいだけだ。
「主婦」という言葉が日本一似合う、あまりにも僕に過保護な母。
僕に執着することで、自分の存在価値を一生懸命確認している。
「白」と「黒」だけでしか物事を見極められない、現実主義で少女趣味の姉。
そして、数え切れないくらいの年月をこの六畳の「城」の中で過ごす僕。

なんの取り柄も面白味もない奴ら。 みんなで一緒にご飯を食べたのは、いつだったかな。
それに、腐れ縁のアイツは今日も僕の世話を焼きにやってくる。困った もんだ。

それにしても、この「ナナシ」の本には参ってしまう。
「何かが起こる」どころか、「何も起こりそうにない」平凡なファンタジー。
予定調和のなんてことない物語。

そんなもんだよな。

だが、それは突然起きた。 驚かなかったわけじゃないけど、実は「待ってました」という気持 ちのほうが強かった。
「ナナシ」の本が巻き起こす「何か」は、あまりにも「ベタ 」出来事・・・・・・。

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